Last Updated on 10月 11, 2025 by kakehasi
はじめに
私の経験ですが、病院でのリハビリや電気治療、注射が効かず、鍼灸治療を選択された方にしばしばお会いしてきました。
中には、痛みが激しく歩行器を使用されていた方もいらっしゃいます。
また、病院で体重を落とすよう指導を受けても、歩くたびに強い痛みを感じてしまい、歩行自体が苦痛になっている方もいらっしゃいました。
西洋医学的立場から
『病気がみえる 運動器・整形外科』(編集:医療情報科学研究所)によれば、
「膝関節において、関節軟骨の退行性変化を基盤に、骨の増殖性変化や滑膜の炎症が生じることで、関節破壊・変形をきたす疾患」と定義されています。
また、「50歳以上の女性(特に肥満女性)」に多い疾患とされています。
治療法としては、手術療法に先立って保存療法を行うのが一般的で、同著では保存療法として
「日常生活指導(減量など)、大腿四頭筋訓練、装具療法、薬物療法」
が挙げられています。
鍼灸治療を選択される場合であっても、まれですが骨壊死等の重大な疾患の可能性もある為、病院での画像診断は非常に重要です。先行して病院の受診は必須だといえるでしょう。
当院の鍼灸治療
当院では、伝統的鍼灸術を用いて全身のバランスを整え、早期改善を目指しています。
また、症状や状態に応じて奇経治療や鍼灸による骨盤調整を加えることも多くあります。
私の臨床経験上、股関節・膝関節の可動域を確認し、異常がある場合にはソフトな矯正を軽く行うことで、高い改善効果が得られるケースが多くあります。
『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』(南江堂)によれば、
「東洋医学では、膝痛は膝関節およびその周辺部の気血の変動によって起こる」とされています。
この考え方を基に、痛みのある部位を通る経絡を整えることで、大きな改善効果を示す場合があります。
経験上、年齢や痛みの強さと治療の難易度が必ずしも比例するわけではありません。
90代を超える方でも、一度の短時間の施術で痛みが大幅に軽減することもあります。
一方で、明らかに標準体重を大幅に超える方では、治療効果が出にくい傾向が見られます。
そのような場合には、食欲を抑える効果があるとされる「飢点(きてん)」という耳のツボにシールタイプの鍼を貼るなどの工夫を行い、長期間の継続治療を通じて体質改善を図っていきます。
執筆者
寺田 りょう(鍼灸師/言語聴覚士)
名古屋市南区「かけはしはり灸院」院長。
東洋医学に基づいた伝統鍼灸と、言語聴覚士としての西洋医学的視点を融合させ、心身のバランスを整える施術を行っています。
出典
- 医療情報科学研究所 編『病気がみえる 運動器・整形外科』(メディックメディア)
- 南江堂『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』