Last Updated on 2月 25, 2026 by kakehasi
はじめに
私の経験ですが、腰部脊柱管狭窄症のために、晩年に腰が曲がったまま杖歩行をされていたり、歩行器を使用しているご高齢の方への鍼灸施術をさせていただいたことがあります。
また、昔に受けた手術の部位が数十年後に再び痛み出し、再発に悩まされている方の施術も経験しています。
人生100年時代の中で、「自分の足で最後まで歩きたい」と願う方は多く、腰部脊柱管狭窄症は単なる痛みやしびれだけでなく、人生そのものの質にも大きな影響を及ぼす症状だと考えられます。
西洋医学的な立場から
『病気がみえる 運動器・整形外科』(編集:医療情報科学研究所)によると、
「脊柱管や椎間孔が狭小化し、脊髄・馬尾・神経根を圧迫することで特有の神経症状を呈する症候群」と定義されています。
また、「加齢による変性(変性脊椎すべり症、変形性脊椎症)が大半を占める」とされています。
腰椎椎間板ヘルニアが比較的若い世代に多いのと対照的に、加齢が主な原因であることがわかります。
同著では、
「まず保存療法を行い、奏功しない場合に手術療法を検討する」
「尿閉をきたした場合は早急に手術を行わないと予後不良になる」
と記載されています。
そのため、鍼灸を検討する際にも、病院での画像診断は非常に重要です。
まずは整形外科で受診し、正確な診断を受けた上で、鍼灸を併用することが望ましいと考えます。
東洋医学的な立場から
『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』(南江堂)によれば、
「腰下肢痛は腎と密接な関係がある」とされています。
さらに腎について「腎精の衰えに伴い体は衰弱する」「高齢者の腎精は必然的に不足した状態になる」とも記されています。
東洋医学における“腎”は、西洋医学上の腎臓とは異なりますが、
加齢によって腰痛が出やすくなるという視点は、東西医学で共通しているといえるでしょう。
当院の鍼灸ケア
私の経験では、腰部脊柱管狭窄症の方を東洋医学的に判断すると、腎虚を呈している方が多く見受けられます。
その場合、腎を補うツボに温かいお灸を行い、腎精を補っていきます。
さらに、頭鍼や奇経治療といった伝統的な鍼灸術も組み合わせて施術します。
しびれについては、多くの方が施術当日から変化を実感されることが多いです。
ただし、加齢に伴う腎精不足が根本原因となるため、腰椎椎間板ヘルニアなどに比べて施術回数が多く必要になる傾向があります。
特に高齢の方では、週1回からスタートし、徐々に2週に1回、3週に1回と間隔をあけながら継続していく方法をおすすめしています。
執筆者
寺田 りょう(鍼灸師/言語聴覚士)
名古屋市南区「かけはしはり灸院」院長。
総合病院(回復期リハビリ病棟)、訪問看護、老人ホームでの実務経験を持つ言語聴覚士・鍼灸師。病院での全身リハビリの知見と、東洋医学を融合させた独自の施術体系を構築。
【所属】公益社団法人 愛知県鍼灸マッサージ師会、一般社団法人 東洋はり医学会。
病院では「原因不明」と言われた不調に対し、医療・介護・伝統鍼灸の多角的な視点からアプローチしている。
出典
- 医療情報科学研究所 編『病気がみえる 運動器・整形外科』(メディックメディア)
- 南江堂『新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)』